毎月更新!時事コラム
最近の税に関するコトバ集
◆「納得や共感のできる地方交付税のあり方を作っていきたい」(3月26日、徳島県の後藤田正純知事)――記者会見で。徳島県の3町(つるぎ、石井、板野)が特別交付税を不当に減額されたとして、県に損害賠償を求めていた裁判で和解が成立した。後藤田知事は「制度の運用や算定方法について疑義を生じさせたことを遺憾に思う。県政を預かる立場として申し訳なく思っている」と3町に謝罪した。その上で、今後の特別交付税の算定方法については、「まず透明性と信頼性が大切で、議論を重ねた上で納得と共感、信頼関係のもとに算定を行いたい」と述べた。
◆「課税の現場を無視している」(3月12日、自由民主党の西田昌司参議院議員)――財政金融委員会で。国税庁の青木孝徳主税局長の「インボイス制度は複数税率のもと適正な課税を確保するために必要な制度であり、事務作業の簡素化の観点で論じるのは適切ではない」という答弁に対して、西田議員は「帳簿方式で今までやってきて何か問題はあったのか。結局、帳簿が正しいかどうかは調査に行って初めて分かること。しかもインボイスを普及させるためにしばらく調査をしないと国税庁も言っているわけですから、つじつまがあっていない」と事業者が単に事務負担を強いられているだけの現状を厳しく非難した。さらに制度設計について、「そもそもこの制度を作るときの発想が現場の意見を聞いていないものだった。現場の税務署の話を聞いていたらこんな話にはなりません」と指摘した。
◆「仙台市と共創しながら社会に貢献できるのではないかということで、(ふるさと納税を活用した大学支援を)要望した」(3月27日、宮城教育大学の村松隆学長)――囲み取材で。仙台市内にある東北大学などの14大学が連名で、ふるさと納税の税収使途に大学支援を盛り込むよう要望した。要望書には、大学が優れた人材を確保・育成し、地元に輩出していくためにもふるさと納税による支援が必要である旨が記されている。要望に対して郡和子仙台市長は「現在の施策との整合性を見ながら検討していきたい」と答えた。なお、京都市や神戸市など一部の政令指定都市では、すでにふるさと納税の税収を活用した大学支援が行われている。
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電気・ガス価格激変緩和対策
エネルギー価格高騰対策の一環として行われている、政府の補助金によって消費者の電気代とガス代が毎月値引きされる期間限定の特例措置のこと。
値引き期間は2023年1月から24年5月使用分までで、承認された小売業者を利用していれば消費者側からの申請は不要だ。この承認された小売業者とは、経済産業大臣に対して申請を行った上で認可・承認された電気やガスを販売する業者のこと。各業者はこの申請と承認により値引きの原資を政府から受け取り、消費者に請求する電気料金やガス料金に反映する。24年4月までは、電気代で1kwh当たり「低圧3.5円」、「高圧1.8円」、ガス代で1m3当たり「15円」(家庭および年間契約料1000万m3未満の企業)が補助される。
世界的な情勢不安を背景とした燃料価格の上昇は、円安が進行する日本に大きく影響した。国内のエネルギー価格の高騰を受け、家庭や企業の負担を軽減するために導入されたのが、この激変緩和措置だ。本来は23年12月に終了予定だったが、デフレからの完全脱却を目標に24年4月まで同補助額で延長した(5月使用分は4月までの約半分の補助額)。
政府は6月以降も継続の検討をしていたが、3月28日にいったん5月で終了をする方向で調整に入ったことを明らかにした。
解説 国の基金
耐震・環境不動産支援基金
不動産の耐震性や環境性能の向上を支援するため2012年に設立された。所管は国土交通省、基金を保有する基金設置法人は一般社団法人環境不動産普及促進機構(促進機構)で、初年度には350億円の交付を受けた。15年に50億円、23年に20億円が国庫に返納され、2023年度の基金残高は308億1300万円(見込み)。基金の終期は決まっていない。支出先のトップはスターツ環境不動産ファンド投資事業有限責任組合で、22年度は50億円が支出されている。
事業の流れは、基金設置法人(促進機構)が不動産の開発、改修、建て替えなどをする対象事業者に出資し、当該事業者が不動産の資産価値を高めた上で企業や個人、またはJリート、私募リートなどに売却し、その代金の一部を基金に配当として支払う。基金からの出資は、不動産運用会社らが出資する投資事業有限責任組合(LPS)を経由することもできる。その際は対象事業者からの配当はLPSを経由して基金に支払われることになる。
本基金について促進機構では、「老朽・低未利用不動産について、国が民間投資の呼び水となるリスクマネーを供給することにより、地域の再生・活性化に資するまちづくりと地球温暖化対策を推進すること」を目的としている。
なお、促進機構は「日本経済再生に向けた緊急経済対策」に基づいて「耐震・環境不動産形成促進事業(国交省・環境省)」の基金設置法人として13年に基金規模300億円で設立された。