毎月更新!時事コラム
最近の税に関するコトバ集
◆「納税の意味を考えてご協力をお願いしなければなりません」(3月15日、岸田文雄首相)――参院予算委員会で。確定申告の最終日につき、国民に対して言いたいことはないかと問われた岸田首相は「政治に対して大きな不信を招いてしまったことについて深刻に受け止め、心から国民の皆様にお詫びを申し上げなければならない」と謝罪の言葉を述べた。その上で、「納税というものは社会のコストをできるだけ多くの皆様に支えていただくためのもの。この社会を維持していくためにも引き続き国民の皆様のご理解とご協力をお願いしなければなりません」とコメントした。岸田首相の発言に、立憲民主党の田名部匡代議員は「納税の意味を考えてほしいのは国民が自民党の裏金議員に対して思っていること。これまでの答弁や政倫審でも全く真実は明らかになっていない」と裏金問題への自民党の対応を厳しく非難した。
◆「税や社会保険で取られてしまっては賃上げを実感しにくい」(3月18日、国民民主党の竹詰仁議員)―――予算委員会で。1995年以前は物価上昇にあわせて所得税の控除も見直されてきたが、95年以降、およそ30年間にわたって所得税の課税最低限の額が変化していないことについて、竹詰議員は「生きるコストが上昇しているなかで、基礎控除あるいは給与所得控除の見直しが必要」と主張した。これに対して岸田首相は、「現時点において、日本では賃金上昇が物価高に追いついておらず、再びデフレに戻る見込みがないとは言い切れない。定額減税によって国民の可処分所得を下支えすることが重要」と答弁している。
◆「(新たな)償却の仕組みを作るのもありじゃないか」(3月21日、自由民主党の山田太郎議員)―――財政金融委員会で。法令によって資産の償却年数が定められていることについて山田議員は「パソコンは4年、サーバーは5年、スマホが実は10年間となっている。今どき10年前のものを使っていることの方が珍しい。実際の企業活動にあわせて償却期間を決められる方が(設備)投資も促進される」と持論を展開した。山田氏は「それぞれの固定資産をどれくらい使うべきなのか、どれくらいで価値が無くなるか」を税制が決めてしまうことがそもそもおかしいと主張した。
気になるニュースのキーワード
消費者物価指数(CPI)
消費者が購入するモノやサービスを対象に価格変動を集計した指数で、総務省統計局が1946年8月から毎月公表している。物価を示す指標はいくつかあるが、CPIは経済政策を的確に推進する上で重視される。日本だけではなく世界各国が算出しているが、中でもアメリカは世界経済に大きな影響を及ぼすため注目度が高いことで知られる。
現在、日本では2020年の物価を「基準」として毎月の指数を公表している。なお、基準年は5年ごとに改定される。現時点では合計582品目を固定して基準時と比較し、物価の変化を測る。
また、CPIには種類があり、通常ニュースなどでは全国総合指数が使われるが、総合指数の他には、生鮮食品を除いた指数(コアCPI)、生鮮食品およびエネルギーを除く指数(コアコアCPI)、持ち家の帰属家賃を除いた指数―がある。これらの不安定な要因を除いて、数値が上下していれば、より厳密に物価の変動を把握していると考えられるためCPIは「経済の体温計」とも呼ばれる。
日銀は3月19日、賃金の上昇を伴う形で「CPIが安定的に2%上昇」する好循環が見通せると判断し、マイナス金利の解除に踏み切った。
解説 国の基金
積み上がった16.6兆円
政府の予算は年度ごとにつくり、そして年度内に使い切るのが原則だ。だが、それだと将来にわたる必要額があらかじめ見込みにくい事業に予算を付けにくい。そのため単年度の予算計上が難しい事業のため長期にわたって積み立てている資金を「基金」という。
国の予算に計上して新規に設置し、または既存の基金に積み増して、国が公募などで選んだ独立行政法人や公益法人が他の財産と分けて保管する。明治政府が凶作に備えて困窮者対策として定期的に資金を積み立てたのが始まりとされる。
事業形態に応じて、①基金を取り崩して補助金などを交付する「取り崩し型」、②出資金や貸付金として交付し、最終的に資金を回収する「回転型」、③債務保証などに使う「保有型」、④基金の運用益の範囲内で事業を行う「運用型」――の4つに大別される。
2008年のリーマン・ショック後の経済対策などで徐々に活用が始まったものの、規模はさほど大きくなく19年までは2兆円台の残高で推移してきた。それが新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した20年度になると新たな基金が乱立し、22年度には16.6兆円にもなった。毎年の補正予算編成のたびに水ぶくれし、使い道が不明瞭かつ設定後の管理がおろそかであるなど、多くの問題が指摘されている。
使われていなくても返納のルールがないため基金は積み上がる一方だ。次回からは府省庁が設置する個別の基金の実態を紹介していく。