毎月更新!時事コラム

第1781号(8月15号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「保険証の廃止は期限を切らずに取り組んでいくべきだ」(7月24日、萩生田光一自民党政調会長)――視察先の熊本市で。来年秋に紙の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化させる政府方針に対して、「システムを前に進めていくという基本的な姿勢は必要だが、国民が不安に思っている以上、不安を払拭(ふっしょく)してこそ信頼あるシステムになっていく」と指摘した。その上で「無理に最終的なお尻の時間を切らず、しっかり啓もうし、理解していただく機会をつくる必要がある」と述べ、期限を設けずに取り組んでいくべきとの認識を示した。これに対して松野博一官房長官は翌日の会見で「発言の詳細を承知しておらずコメントは差し控える」と距離を置いた上で、「来年秋以降の1年間の経過措置も踏まえて国民の不安を払拭する」と説明し、萩生田氏の見直し論を突っぱねた。

◆「パリ旅行の費用は党費と参加者の自腹で捻出しています」(7月31日、松川るい参院議員)――SNSへの投稿で。自民党女性局の議員38人が研修としてフランスを訪れ、観光名所などで撮影した写真を掲載したことが「税金の無駄遣い」と批判を招いたことについて、「費用は党費と各参加者の自腹で捻出しています」と反論した。しかしこの投稿は「政党交付金や議員の給料も税金だ」とさらなる反発を呼び、自民党幹事長室が「このたびの海外研修の費用は党負担分は国民の税金である政党助成金(政党交付金)からは支出しておりません」と釈明するに至っている。松川氏の投稿に対しては「旅費が党費で支払われてる時点で自腹ではありません」(実業家のひろゆき氏)、「一生懸命税金払っている国民にとってはこの写真は見たくないなと思いました」(タレントのヒコロヒーさん)など各方面から批判が噴出している。

◆「ふるさと納税ではなく、ふるさと節税だ」(8月3日、熊谷俊人千葉県知事)――記者会見で。任意の自治体に寄付をすると住んでいる自治体に納める住民税などが差し引かれるふるさと納税制度について、「実質的には返礼品を目当てにする『ふるさと節税』になっている」と批判した。千葉県からの同制度を利用した他自治体への寄付は約160億円である一方、寄付に伴う住民税の減収額は374億円ほどと、大きなマイナスになっている。

気になるニュースのキーワード

政党交付金(政党助成金)

 政党交付金は、政党の活動を助成する目的で税金から拠出する政治資金のこと。政党助成法に基づいて要件を満たした政党に交付される。直近の国勢調査の人口に基づいて国民1人当たり250円の負担で総額を算出し、各政党にはそれぞれの国会議員数や国政選挙の得票数に応じて配分する。2023年分の総額は約316億円となっている。
 1995年の政治改革の一環で導入が決まった。導入以前は、政治資金のほとんどが企業や団体からの寄付によるものだったが、リクルート事件などの反省から政党が特定の企業・団体と癒着する温床となる献金を制限し、そのかわりに政党交付金が設けられた。
 だが企業からの献金は、政党本部・支部や政党が指定する政治資金団体へ行うことができることから、献金された資金を政党が政治家個人の資金管理団体へ移動させる抜け道があり、実質は献金と政党交付金の〝二重取り〟をすることが可能な状態となっている。
 使途については政治活動の自由を尊重する観点から国は原則として制限していない。7月末、自民党女性局のパリ旅行が観光目的であるとの批判を受け、参加した議員らが「旅費は党費から出ているため税金の無駄遣いではない」との反論を行ったが、党費の大半は政党交付金で、その原資が税金だと猛批判を浴びた。

押さえておきたいIT用語

デジタルインボイス(電子インボイス)

 デジタルインボイスとは、今年10月にスタートするインボイス制度に対応した新たな電子請求書の形式のこと。デジタル庁が定めた統一規格に沿っているため、異なる会計ソフトの間でもデータを用意にやり取り、連携できることが特徴となっている。
 これまでのPDFファイルや電子データ交換(EDI)といった従来の電子請求書は、企業や業界ごとに異なる書式を使っていたため、会計ソフトへの転記は実質的に手入力で行う必要があった。その点デジタルインボイスでは、共通規格によって入力項目やデータ配列といった仕様が統一されているため、対応したソフト同士であれば請求書の内容を会計ソフトに自動連携できるようになるというメリットがある。
 日本に先行してインボイス制度を導入している多くの国で採用済みで、EUでは2013年より実施され、韓国ではすべての法人取引がデジタルインボイスで行われることが義務化されている。日本では、昨年10月に共通規格「JP PINT」が策定され、多くのベンダーなどがサービスを始めている状況だ。ただし請求書を送る側と受け取る側の双方がデジタルインボイスに対応した会計ソフトを用意する必要があることから、導入コストを捻出できない中小企業への普及には時間がかかるとの指摘もある。

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