かんたん相続税Q&A

平成27年より相続税が改正されました

(その1)相続税とは?

 相続税とは、亡くなった人の財産を引継ぐ人が納める税金です。なぜ財産を引継いだだけで税金がかけられるのかといいますと、裕福な家の子どもは家が裕福というだけで努力せず財産を手に入れることができます。さらにその子どもの子どもも同じように財産を手に入れることができて…。このように裕福な家庭に財産が集中してしまうのを避ける目的と、努力しないで財産を手に入れたのなら、その一部を税金という形で社会に還元してくださいという意図で課税されています。

 さて、どんなものに相続税が課税されるかといいますと、現金預金はもちろん、家・土地、保険金、株式などお金に換金できるものはすべて対象になります。これらの財産を引継ぐ人、そしてその分け前というのは法律で目安が決められています。亡くなった人の配偶者は必ず相続人となり、配偶者以外の優先順位は①子ども、②父母、③兄弟姉妹となっています。子どもがいなければ父母が相続人となりますが、子どもがいれば父母は相続人とはなりません。ちなみに分け前は下記の表のようになります。

【相続人と分け前】
配偶者 子ども 父母 兄弟姉妹
1/2 1/2 - -
2/3 - 1/3 -
3/4 - - 1/4

※同順位の相続人が複数いる場合は、取り分をさらにその人数で分けます

(その2)名義預金について

 相続税が改正され、平成27年1月1日から改正相続税法が施行されました。なんと50年に1度の大改正です。相続大増税と世間を賑わせています。
 変わったところは大きく2つ。1つは最高税率が50%だったものが、55%に上がりました。もう一つは非課税枠である基礎控除(税金の計算から除かれる部分)が4割減りました。基礎控除が4割減るということは、相続人が配偶者と子供2人の計3人の場合、昨年までは8,000万円の基礎控除が受けられましたが、今年から4,800万円しか控除が受けられません。相続税とはお金持ちが課税される税金と今まで思われてきましたが、今後は地価の高い都心部に家を持つサラリーマン家庭も課税対象になることが十分に考えられます。

 ところで、皆様は"名義預金"についてご存知ですか。これは相続税の税務調査で指摘の多いものの1つです。つまり名義預金とは、預金の名義人は子供や孫ですが、実際に管理しているのは親や祖父母という預金のことです。子供の将来のために子供や孫の名義で預金するけれど、好き勝手に使われては困るから管理は親自身が行っている、このような預金契約が該当します。名義預金をされている方、結構いらっしゃるのではないでしょうか。「名義は子供だから子供にあげたお金だ!」といっても子供がその存在を知らなかったら、子供に贈与したことにはなりません。その預金は贈与者(親)の財産の一部とみなされてしまいます。

名義預金とされないためには贈与の証拠を残しましょう。以下のものが証拠となります。

  • 通帳や印鑑は贈与者、受贈者でそれぞれ管理する
  • 贈与のたびに契約書を作る
  • 子供が普段から使用している通帳に振込む
  • あえて贈与税の非課税枠(110万円)を超えて贈与税の申告をする  など

この機会に今まで知らずに名義預金で預金されていた方は、見直されてはいかがでしょう。 もし不明な点などございましたら、お気軽に税理士法人あおぞらまでご相談下さい。

(その3)相続開始から申告・納税について

 相続開始から申告・納税まで、いつまでに何をしなければならないのでしょうか。大きな区切りとしては、相続開始の日から3か月と10か月にしなければならないことがあります。

【相続の開始~】

 まず、相続の開始の日ですが、一般的には人が亡くなった日です。相続の開始があったら最初にすることは、相続人に該当する人を戸籍などから調べることです。遺言書が残されているかどうかも確認します。そして財産の確認をします。預金・不動産・株式・骨董品などのプラスの財産はもちろん、借入金などのマイナスの財産もすべて確認します。引継ぐ財産はプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含まれます。
最初にこれらのことをきちんとしておかないと、相続人の間でやっと財産分けが合意に至ったのに「知らない借金が出てきた」「実は結婚前に認知していた子がいた」などという事実が発覚した場合、財産分けのやり直しとなってしまいます。

【3ヶ月以内に放棄・限定承認の手続き】

 3か月以内にしなければならないことは、相続の放棄と限定承認です。
 相続の放棄とは、財産も借金もいっさい引き継がないことです。相続を放棄したい場合は3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。亡くなった人の財産はなく、借金しかない場合には放棄をおすすめします。ただし、放棄は取り消すことができませんので、よく考えてから決めなければなりません。
 また、放棄のように財産も借入金も手放すのではなく、財産よりも借入金が多い場合に、相続する財産の範囲内で借金も相続する(財産以上の借入金の返済義務はなくなる)こともできます。これが限定承認です。この場合も3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。財産が多いか借金が多いか、迷うようなときにこの制度を利用するといいのではないでしょうか。ちなみに、財産はもらうけど、借金は放棄するという都合のよいことはできません。
 この申し出をしなければすべての財産・借金を引き継ぐことになりますので、放棄等をしたい方は手続きを忘れないようにしましょう。

【10ヶ月以内に申告】

 申告は相続の開始の日の翌日から10ヶ月(2月1日に亡くなったのなら、その年の12月1日)以内にしなければなりません。これを忘れると相続税以外にペナルティーとして別の税金も払わなければならなくなるので気を付けましょう。

(その4)節税対策:贈与で手持ち財産を減らす

 平成27年1月1日から相続税が増税になりました。支払う相続税を減らす・かからないようにするには方法はいろいろあります。その中でも一番簡単な方法は、贈与(財産を無償で与えることで、あげる側ともらう側の合意で贈与が成立します)をして手持ちの財産を減らすことです。

 贈与税という税金もありますが、1年間(1/1~12/31)で110万円までの贈与でしたら贈与税はかかりません。手持ちの財産も減らせ、税金もかかりません。これを10年続ければ1,100万円、20年続ければ2,200万円となります。2人に贈与すれは2倍の金額となり、かなりの金額の手持ち財産を減らすことができます。

 ただ、贈与した方が亡くなった場合、亡くなった日から3年前の日(H27.4.2に亡くなったのでしたら、H24.4.2)以降に贈与によりもらった財産は相続の対象の財産に含まれます。余命短いおじいちゃんが相続財産を減らすために「駆け込み贈与」したら、国はその分だけ相続税を徴収することが出来なくなってしまいます。これを避けるために3年前に贈与されたものは相続財産に含めることとしているのです。

 110万円までは贈与税はかかりませんが、気を付けなければならないことがあります。それは、1年間で「誰からもらったか」ではなく、「どれだけもらったか」が重要になるということです。贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円までは贈与税がかからないのです。例えば、子どもがお父さんから100万円、お母さんから100万円もらった場合、子どもは全部で200万円もらったことになります。1年間に贈与によりもらった金額は200万円です。こうなると贈与によりもらった金額は110万円を超えてしまい、贈与税がかかってきますので気を付けましょう。

 相続税対策は早め早めにすることでその効果は大きくなります。税理士法人あおぞらには各分野に精通している税理士がいます。もちろん相続に関しましても専門としている税理士がいます。「うちには相続税はかかるのだろうか」「どんな対策をすれはいいのだろうか」とお悩みの方は一度税理士法人あおぞらまでご相談下さい 。

(その5)受け取った保険金の取り扱い

 家庭を持つと多くの人は、「もし自分に何かあっても家族が困らないように保険に入っておこう」と保険に加入されるのではないでしょうか。この場合に支払われる保険金は、契約形態によっては相続財産の一部として相続財産に含むこととなります(下記表参照)。

 本来なら、受取人の財産になりますが、「死亡によって入ってきた財産だから、入手の仕方は相続財産とかわらないのでは?」ということで相続財産とみなされてしまうのです。

 しかし、この保険金は相続税の計算の対象にはなりますが、故人が家族を思って残した多額のお金です。ちゃんと非課税枠が設けられています。

相続人が妻・子ども2人の計3人の場合1,500万円(500万円×(注)法定相続人の数)までは、相続税の計算からは除かれるので安心してください。

 ただし、相続を放棄した人や相続人以外の人が保険金を受け取った場合には、この非課税の規定は適用されませんのでご注意ください。もし不明な点などございましたら、お気軽に税理士法人あおぞらまでご相談下さい。

【夫・妻・子どもがいる家庭の場合】
契約者
(=保険料負担者)
保険対象者
(被保険者)
受取人 対象となる税金
妻や子ども 相続税
相続税
子ども 贈与税
所得税

(注)法定相続人とは、相続する権利がある人のことをいいます。一般的には相続人と同じ意味を持っています。

(その6)非課税財産・債務・葬式費用について

 相続財産の中には相続税がかからない財産もあります。この相続税がかからない財産を非課税財産といいますが、以下のものがあります。

  • お墓・仏壇・神棚など
  • 生命保険金の一部
  • 死亡退職金の一部
  • 国等へ寄付した財産
  • 日本赤十字社などの特定の公益法人へ寄付した財産

 これらの財産は、その性質、国民感情、残された相続人等の生活を保障するなどの理由から非課税財産とされています。

 また、相続財産から控除できるものもあります。被相続人(亡くなった方)の債務と葬式費用です。

【債務】

  • 借入金
  • 未払いの医療費や入院費
  • 未払いの税金  等

 債務については、相続開始時に確実と認められるものに限られます。そのため、相続開始時に確実ではない保証債務や連帯債務は控除できません。

【葬式費用】

  • 通夜・本葬費用
  • 葬式の際のお布施
  • 遺体や遺骨の回送にかかった費用

 これらの費用に関して領収書等は残しておきましょう。お布施などは支払年年月日・相手先・金額をメモしておきます。
 ただし、香典返しの費用、初七日・四十九日の法事の費用、墓地の購入費は控除できません。

※お墓は亡くなった後に購入すると控除の対象にはなりませんが、亡くなる前に購入しておくと購入代金分の相続財産が減らせ、お墓自体も非課税で相続税がかかりません。自分のお墓は自分で準備しておいた方が良いでしょう。

(その7)相続にかかる費用

 相続が発生すると専門家などに依頼することがあると思います。当然のことながら、専門家に頼ると報酬が発生します。「自分たちの相続は円満に進み、相続税もかからない。専門家に頼らず、すべての手続きを自分たちでしよう。」といった場合にも相続手続きをおこなうには以下のような書類が必要となり、費用は以下の通りです。

【必要書類】
戸籍謄本(相続人全員分) 1通450円
住民票(相続人全員分) 1通100~300円
除籍謄本(亡くなった人の戸籍) 1通750円
印鑑証明書(相続人全員分) 1通100~300円


 不動産の名義変更がある場合にはさらに次の書類と登録免許税という税金が必要です。

登記事項証明書 1通480~600円
固定資産評価証明書 1通100~300円
登録免許税 固定資産評価額×1,000分の4

 固定資産評価額は毎年4月頃に届く固定資産税の納税通知書に課税明細書がありますので、こちらで確認することができます。
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