毎月更新!時事コラム

第1771号(5月5号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「税負担の重さは江戸時代の年貢並みだ」(4月19日、日本維新の会の東徹参院議員)――参院本会議で。国民の所得に占める税金や社会保険料の負担割合を示す「国民負担率」がほぼ半分を占めていることについて、「江戸時代の年貢率である『五公五民』のようだ」と指摘した。日本はバブル崩壊後の1990年代初頭から約30年間にわたり経済の低迷が続いており所得が伸び悩んでいるが、少子高齢化を背景に税金や社会保険料は引き上げられている。30年前の93年時点で36.3%だった国民負担率は、最新の2022年時点で47.5%まで上昇した。東氏が「少子高齢化と人口減少という国難を克服できなかったのは政治の怠慢だ」と主張すると、岸田首相は「社会保障や教育などの公的サービスに還元されている。江戸時代の年貢と同列に語るのは不適当だ」との見解を示した。

◆「事業撤退を支援する税制が求められている」(4月18日、東京商工リサーチ)――調査レポートで。3月29日に開催された「新しい資本主義実現会議」の中で、岸田文雄首相は企業の生産性を高めるためには「経営不振の事業から退出しやすくなるような支援策が必要だ」と述べて新ルールを検討する方針を示した。この発言を受けて東商リサーチが事業撤退時に必要となる支援策について全国の537社を対象にアンケートを実施したところ、税負担軽減を目的に「費用の損金算入枠の拡大」を求める回答が37.0%と約4割に上った。なお要望のトップは「費用の助成」(56.2%)で、その他の目立った回答としては、「債務の減免」(34.6%)、「個人保証の解除」(30.9%)などがあった。

◆「選手のためにならない練習場に税金を使う意味はない」(4月12日、広島・安芸高田市の石丸伸二市長)――ツイッターで。プロサッカークラブ「サンフレッチェ広島」の東俊希選手がインターネットテレビで「練習場まで遠く往復2時間が無駄になる」「みんな練習場を変えてほしいと言っている」と市の提供する練習場に不満をもらしたことについて、「チームを応援してきた立場としてすごく複雑な思い。選手のためにならないのであれば税金を持ち出す意味はない」との考えを述べた。市はグラウンドの管理のために年間2200万円の予算を割いているという。

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インボイス制度の激変緩和措置

 インボイス制度の激変緩和措置とは、今年10月にスタートする消費税のインボイス制度で負担増となる免税事業者や小規模事業者を対象とする救済措置のこと。インボイス制度をきっかけに免税事業者が淘汰されると懸念する声が相次いだことを受けて導入が決まった。2023年度税制改正大綱に盛り込まれ、衆参両院の審議を経て3月に成立した。
 激変緩和措置の内容は大きく分けて2つある。1つ目は「納税額の軽減措置」だ。インボイス制度対応のために免税事業者から課税事業者に転換した事業者は、制度開始から2026年9月までの3年間は8割軽減できる。また、同年10月から29年9月までの3年間は納税額を5割減らせる。
 2つ目は「事務負担の軽減措置」だ。売上高が一定の規模に満たない事業者は、インボイスの保存がなくても、仕入額が1万円未満であれば仕入税額控除を適用できる。29年9月までの6年間の取引が対象だ。
 あくまで時限的な措置となっているため「将来的に免税事業者が取引されるリスクは解消されていない」「制度導入のための呼び水に過ぎない」と税理士団体からは批判の声も上がっている。また、特例の新設によりかえって事務処理が煩雑化し、新たな税賠リスクを生むとの指摘もある。

押さえておきたいIT用語

生成的人工知能(生成的AI)

 生成的人工知能(生成的AI)とは、人の指示に従って文章や画像、動画といったコンテンツを自動生成できる人工知能のこと。コンテンツのもととなる素材には、主にインターネット上で収集した膨大なデータが活用される。2022年から高精度なサービスが次々に一般公開されており、代表的な例としては22年8月に公開された画像生成AI「ステーブル・ディフュージョン」や同9月リリースの動画生成AI「メーク・ア・ビデオ」、同11月公表の対話型AI「チャットGPT」などがある。
 生成的AIが進歩すれば、自動で高品質なコンテンツを量産できるようになると期待されている。米ゴールドマン・サックスは今後10年間で世界の国内総生産(GDP)を7%引き上げると見通した。
 ただ、生成的AIの普及にはさまざまな観点から懸念の声も上がっている。ゴールドマン・サックスは雇用への影響に着目し、「将来的に先進国で3億人程度が職を失う可能性がある」と指摘した。
 また開発企業による個人データの収集・利用がプライバシーの侵害や著作権法の違反にあたるおそれもある。イタリア政府は3月末、代表的な生成的AIのひとつである「チャットGPT」について「個人情報保護法に抵触する」と判断し利用を禁じた。米メディアCNNによると、ドイツやフランス、アイルランドもイタリアに追随する可能性があるという。日本国内でも、企業や自治体単位で利用を制限する動きが出始めている。

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