毎月更新!時事コラム

第1757号(12月15号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「岸田首相は会計不正を共謀していた」(11月29日、権力犯罪を監視する実行委員会)――東京地検特捜部に提出した告発状で。宛名や但し書きが空欄の領収書が多数見つかり会計上の不正疑惑が持ち上がっている岸田文雄首相について、「会計や事務の担当者の不正を首相が黙認、共謀していた」と告発した。告発状によると、岸田首相の政治団体が広島県選挙管理委員会に提出していた領収書等333枚に不備があり、「公職選挙法違反や政治資金規正法違反の疑いがある」という。岸田首相は「添付書類である領収書には一部不記載のものがあった」と不備があった点については認めたものの、「選挙管理委員会に提出した際に特段指摘がなかったことから問題ないと思っていた」と釈明している。

◆「防衛費の財源として適切なのは消費税だ」(11月29日、経済同友会の櫻田謙悟代表幹事)――記者会見で。政府が検討を進めている防衛力強化のための財源について、「国家の安全を保障するという性格上、一番適切なのは国民全体で負担する消費税だ」との見解を示した。政府は中国や北朝鮮を念頭に有事のリスクが高まっているとして、防衛費を2027年度までにNATO諸国の国防予算の対GDP費目標(2%以上)へ増やすとしている。21年度の防衛費は約5.3兆円、GDP比1.07%であり、目標達成には従来の倍の予算を割く必要がある。政府・与党内の財源案としては、使い道を明らかにした上で通常より短い期間で償還する「つなぎ国債」の発行や、法人税の増税などが挙がっている。

◆「ふるさと納税で奪われた税金を少しでも取り戻したい」(11月21日、東京・世田谷区の保坂展人区長)――記者会見で。ふるさと納税の返礼品を巡り、これまで「他自治体と競争しない」としていた方針を一転し、「ふるさと納税による寄付を区外住民から集めるため、抜本的にラインナップを増やしていく」との方針を掲げた。2021年度の同区に対するふるさと納税の寄付額は約1.5億円にとどまった一方、同区民が他の自治体に寄付して特別区民税の控除を受けたことによる財源流出額は87億円に上ったという。保坂区長は「区財政を圧迫しかねない。奪われた財源を少しでも取り戻したい」と述べた。

気になるニュースのキーワード

1億円の壁

 1億円の壁とは、おおむね所得1億円を境に、所得税の負担率が低くなる現象を指す。金融資産の多い富裕層ほど税負担が軽くなる税制上のゆがみとなっており、政府・与党は2023年度税制改正に向けて対応策を検討中だ。
 1億円の壁が生じている原因は、給与・事業といった一般的な所得と、配当・利子などの金融所得との税率差だ。給与や事業で得た所得は、原則としてすべてを合算した総額に応じて税率が上がる「累進課税制度」が採用されており、最大で55%(住民税含む)に達する。一方、株式から得られる配当や株式の売却益、預貯金の利子といった金融所得は、例外的にその他の所得とは切り離される「分離課税制度」が適用されており、税率は一律20%にとどまる。所得の多い人ほど所得全体に占める金融所得の割合が増える傾向にあるため、税の負担割合が所得1億円を超えるあたりから逆に軽くなっていくという現象が起きている。
 岸田首相は昨年9月の総裁選で、1億円の壁の存在により「富める者と富まざる者の分断が起き、ひいては日本経済の停滞を招いている」と指摘し金融所得税制の抜本的な見直しを掲げていたが、株式市場の反発への配慮により就任から一週間足らずで「当面触らない」と方針を転換していた。
 政府・与党では現在、金融所得とその他の所得の合計が一定額を超える人に限り課税強化する案などが検討されている。

押さえておきたいIT用語

フォレンジック

 フォレンジックとは犯罪捜査における分析・鑑識を意味する言葉で、特にIT分野ではサイバー攻撃を受けた企業のデジタル端末やネットワーク内の情報を収集し、被害状況を解析する調査のことを指す。「デジタル・フォレンジック」「フォレンジック調査」「コンピュータ・フォレンジック」とも呼ばれる。サイバー攻撃の被害が急速に拡大する中、政府の個人情報保護委員会は攻撃を受けたあとの調査・対応の遅れが原因で取引先に二次被害が発生した事例が報告されているとし、事業者にフォレンジックの活用を呼びかけている。
 フォレンジックは、基本的にはサイバー攻撃を受けた疑いのある企業が外部のコンピューターセキュリティ企業に委託して実施する。調査の手順は、①ハードディスクドライブ(HDD)やUSBメモリといった電子記録装置の証拠保全、②各種データの解析、③サイバー攻撃の抽出・分析、④調査結果の報告――となる。費用はセキュリティ企業や調査範囲によって異なるが、軽微な事案でも数十万円は必要となる。
 費用負担などが原因となり、中小企業ではフォレンジックの活用が進んでいない。帝国データバンクがサイバー攻撃を受けた経験のある385社を対象に実施したアンケートによれば、被害後に「調査費用などの支出はしなかった」との回答が77.9%を占め。

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