毎月更新!時事コラム

第1753号(11月5号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「脱税の疑惑はきっぱり否定する」(10月19日、寺田稔総務相)――衆院予算委員会で。寺田氏の妻が代表を務める政治団体が毎年約500万円の人件費の源泉徴収をしていなかったとして脱税疑惑が取り沙汰されていることについて、「源泉徴収の必要がない請負報酬として支払っていたためであり、不正の事実は一切ない」と否定した。立憲民主党による請負契約書の提示の要求については、「請負契約は書面を必要とするものではない」と拒否した。寺田氏の対応を受けて立民の山井和則衆院議員は、「寺田氏の言い分を許せば、『請負だった』といえば税金を納めなくてよいことになる。模範的な納税をすべきではないか」と批判した。

◆「減税策は誤りだったと全面的に認める」(10月17日、英国のリズ・トラス首相)――記者会見で。政権の公約として掲げていた大規模減税策を撤回したことについて、「間違いがあったことを認め、全面的に謝罪したいと思う」と述べた。撤回した施策は、所得税や法人税、印紙税などを対象に年間450億ポンド(約7.5兆円)を減税するというもの。トラス氏は「減税によりエネルギー価格高騰の影響をやわらげ、経済成長にも繋げる」としていたが、結果的に英国財政の悪化への不安から英ポンドの貨幣価値の急激な低下を招くなど金融市場の世界的な混乱を招いた。トラス氏は保守党内や英国民からの求心力の低下を受けて、10月20日に辞意を表明した。

◆「円安により金融所得課税による格差が広がっている」(10月17日、自民党の宮沢洋一税制調査会長)――記者会見で。コロナ禍入り直後の株安や近時の円安を利用した投機で大幅な利益を得ている富裕層が多いと指摘し、「格差拡大防止の観点から、現行の金融所得課税の仕組みに問題がないか来年度税制改正に向け議論していく」と述べた。所得税率は、原則として所得が多ければ多いほど税率が上がる累進課税が適用されており最高55%に達するが、金融所得の税率は例外的に一律20%となっており、所得が1億円を超えると実質的な税負担が減る「1億円の壁」の存在が政府有識者会議などで指摘されている。岸田政権は金融所得課税の見直しを公約としていたが、株式市場の反発を懸念して先送りしている。

気になるニュースのキーワード

フラット35

 フラット35とは、住宅の購入や改築時に借り入れる住宅ローンの一種で、住宅金融支援機構と民間金融機関が共同で提供している長期固定金利型の融資商品のこと。最大8000万円までの融資を受けられる。借入期間は15年(満60歳以上は10年)以上35年以内となっている。
 フラット35の最大の特徴は、返済期間を通じて金利が一定となっている点だ。定期的に金利が変更される一般的なローン商品と異なり、フラット35では融資実行時の金利で固定されるため、トータルの返済額が確定して家計のシミュレーションを立てやすいというメリットがある。適用される金利は借り入れを行う金融機関によって異なる。また、保証料や連帯保証人が不要、繰り上げ返済手数料が無料、契約者の死亡時に返済不要となる「団体信用生命保険(団信)」への加入が任意、といった利点もある。
 フラット35の利用条件としては「自分自身の居住用とすること」などが求められているが、近年になり投資用マンションを取得するために同制度を悪用する事例が増えている。会計検査院がこのほどフラット35利用者の7100件の融資データを抽出して調査を実施したところ、56件の不正利用が見つかった。不動産業者が合法な手法とだまして購入者を募っているケースも報告されている。

押さえておきたいIT用語

フィンテック

 フィンテックとは、「ファイナンス」と「テクノロジー」を組み合わせた造語で、金融とIT技術を結び付けて提供するサービス全般のことを指す。フィンテックの開発や提供を行う企業は「フィンテック企業」と呼ばれる。
 フィンテックの具体例としては、PayPayやauPayのようなキャッシュレス決済、人工知能を用いた接客型サイネージやチャットボットによる金融関連業務の提供、ビットコインをはじめとするデジタル通貨、金融機関の取引データを自動仕訳するクラウド会計、データベースの連携による銀行口座情報の一元管理などが挙げられる。
 かつては銀行や保険会社などの金融機関が決済や融資、送金、会計、保険、資産運用といった金融サービスを独占していたが、2016年の改正銀行法をきっかけに規制緩和が進み、IT企業が参入しやすくなった。インターネットを利用したさまざまなサービスの登場により、従来よりも低コストかつ迅速に金融サービスを受けやすくなっている。
 IT技術の発展やスマートフォンの多機能化などを背景に、フィンテック市場は世界中で急成長を遂げている。米国や英国、中国をはじめ国策としてフィンテックへの取り組みを強化している国も多い一方、日本では他国ほど積極的には活用されておらず、いわば「フィンテック後進国」となっているのが現状だ。

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