毎月更新!時事コラム

第1747号(9月5号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「米国の税務調査は野獣のように厳しくなる」(8月16日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙)――報道で。日本の国税庁に当たる「内国歳入庁(IRS)」に対し10年間で約800億ドル(約11兆円)の追加予算が決まったことを受け、「今後の米国内の税務調査は野獣のように厳しくなる」と予測した。報道によると追加予算の金額は現在のIRSの年間予算の6倍を超え、税務職員8万7000人の増員やデジタル資産の把握に向けたシステムの構築、大企業・富裕層に対する調査の強化に充てられる見込みだ。バイデン大統領は、「深刻なインフレの影響や財政の赤字を低減させるためには、大企業や富裕層に公平な税負担を求めていかなければならない」と主張している。

◆「国葬に税金を使っている場合ではない」(8月10日、改憲問題対策法律家6団体連絡会の大江京子事務局長)――市民団体の合同会見で。安倍晋三元首相の国葬が9月27日に執り行われる予定になっていることについて、「コロナ禍で生活が困窮する人が多い中、国葬に税金を使っている場合ではない」と批判した。国葬にかかる費用は明らかになっていないものの、政府が半額を負担した2020年の中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬では約1億9000万円を要しており、多額の支出になるのは必至と見られている。政府は国葬を実施する理由について「歴代最長の期間、総理大臣の重責を担い、内政・外交で大きな実績を残したため」と説明し、理解を求めている。

◆「TKO木本氏の立替返済は贈与税の対象になり得る」(8月6日、読売テレビの高岡達之解説委員長)――テレビ番組で。多額の投資トラブルに関与していたお笑いコンビ「TKO」の木本武宏氏が被害者らに出資金相当額を支払う意思を示したことについて、「木本氏が共犯者かどうかははっきりしていない。損害賠償ではなく贈与とみなされれば贈与税が発生するという税理士の指摘がある」と解説した。一部の報道によれば、木本氏は親しい芸人仲間らから数億円に上る資金を集めて知人の投資家2人に預けたものの、分配金の支払いなどが滞ったまま連絡がとれない状況が続いているという。木本氏は、代理人弁護士を立てて投資家らに返金交渉を行っていくとしている。

気になるニュースのキーワード

従業員持株会

 従業員持株会とは、従業員の資産形成の一環として自社株を取得できるようにする制度のこと。従業員の給与や賞与から天引きして資金を集め、購入した自社株を拠出金に応じて分配する仕組みとなっている。企業は持株会の加入者に対し、一般的に拠出金の5~10%程度の「奨励金」を支給する。
 企業にとっては、持株会を通じて毎月の給与から拠出金を集められるようになるため、安定的な資金調達が見込めるという利点がある。また、福利厚生のひとつとしてアピールポイントにもなる。
 一方の従業員にとっては、通常の積立投資と同様に企業の業績次第で元本割れするリスクがあるものの、企業から奨励金の支援を受けられるメリットがある。仮に企業が奨励金を10%に設定していると、従業員は1万円の拠出で1万1千円分の自社株を取得できる。
 岸田政権が中間層の資産所得拡大を見据えた「資産所得倍増プラン」を発表したことを受け、従業員持株会の拡充に向けた国の支援を求める声が高まっている。日本証券業協会の森田敏夫会長は、「持株会は上場企業の9割が導入しているものの実際の利用者は4割程度にとどまっている。中間層の資産所得拡大に向けてもっと活用を促せるよう税優遇を措置すべきだ」として、従業員の資産形成を促す奨励金や、持株数に応じて支払われる配当金の非課税化を求めている。

押さえておきたいIT用語

フィッシング

 フィッシングとは、電子メールやメッセージアプリを悪用した詐欺手法のひとつで、実在する組織を騙ってユーザーネームやパスワード、アカウントID、ATM暗証番号、クレジットカード番号といった個人情報を詐取するものを指す。ニセのサイト(フィッシングサイト)へのアクセスを誘導し、個人情報を入力させる手口となっている。
 国税庁はこのほど、国税当局を騙ったフィッシングが多発しているとして注意喚起している。「【国税庁】未払い税金お支払いのお願い」「税金のお支払い方法に問題があります」といった文面のショートメッセージ(SMS)を通じてニセの国税庁ホームページにアクセスさせ、クレジットカード情報を抜き取る事例が相次いでいるという。不正なアプリのインストールや金銭の払込みを要求してくる事例も確認されている。国税庁は「国税庁・国税局・税務署からSMSを送信することはありません」としている。
 国税当局を騙ったフィッシングが相次いでいる事態を受け、情報処理推進機構(IPA)も「SMS内のURLをタップしないように注意してください」とし、不用意にリンク先に接続しないよう求めている。
 また、日本サイバー犯罪対策センターは、国税庁を騙ったものに限らずフィッシング被害が相次いでいると警告している。具体例としては、通販サイト「アマゾン」を装って個人情報を抜き取る事例が確認されているという。

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