毎月更新!時事コラム

第1745号(8月15号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「石油・ガス企業に課税強化すべき」(8月3日、国際連合のアントニオ・グテーレス事務総長)――ニューヨークでの講演で。ロシアのウクライナ侵攻により燃料価格が高騰するなかで石油・ガス企業が莫大な利益をあげていると指摘し、「戦争に乗じて企業が利益を得るのは非倫理的」としたうえで、「過剰な利益に課税し、その財源を今まさに弱い立場にいる人々の支援に用いるべきだ」と主張した。石油・ガスの主要産出国であるロシアからの供給が著しく減少したことにより、世界的に燃料不足と価格高騰が深刻化している。消費者が光熱費などの値上げに苦慮する一方で石油・ガス企業は大きな利益をあげており、英石油大手のBPはこのほど14年ぶりに過去最高益を更新したと発表したほか、世界最大手であるシェルも4~6月期の利益が過去最高を記録したという。

◆「仮想通貨は税率20%に」(8月3日、日本暗号資産取引業協会)――2023年度の税制改正要望で。株式や投資信託といった他の金融商品よりも税率が高い仮想通貨について税率の引き下げを提言した。現在、仮想通貨の取引で生じた利益には所得額が大きければ大きいほど税率が上がる累進課税が適用されており、最大で55%(所得税45%、住民税10%)に達する。税制改正要望では、株式の譲渡所得や配当所得などに適用されている「金融所得課税」と同様に、仮想通貨の税率も一律20%(所得税15%、住民税5%)に変更すべきだと訴えた。損失を翌年から3年間にわたって控除できる「繰越控除」の導入も求めた。

◆「減税措置を適用するために、日野自動車はクルマの燃費測定を誤魔化していた」(8月2日、特別調査委員会の榊原一夫弁護士)――記者会見で。日野自動車が長期にわたってエンジン認証申請の不正に手を染めていた理由について、「減税措置や補助金が受けられる〝環境にやさしいクルマ〟として売り出すため、特例適用の条件となる燃費基準を満たしたことにしていた」と指摘した。特例措置は、一定の燃費基準を満たした重量車を対象に自動車取得税の減税などを行うもので、2006年に設けられた。日野自動車は基準を満たすクルマの開発に取り組んだものの大幅な未達となり、開発担当者らが虚偽の報告をしていたという。

気になるニュースのキーワード

グループ通算制度

 グループ通算制度とは、複数の関連会社を持つ企業グループ全体に適用される税務申告のルールだ。2020年度の税制改正で導入が決まり、今年4月から移行している。従来は企業グループの親法人がグループ各社の税務申告を一括して行う「連結納税制度」が適用されていたが、修正申告が発生した時にグループ企業全体で再計算を行わなければならないなど事務負担が過大となるデメリットがあり、長年にわたり問題視されていた。グループ通算制度は、連結納税制度の「企業グループ内で損益通算ができる」というメリットを残しつつ事務負担の軽減が可能として導入が決まった。
 新制度の特徴は、法人税の計算や申告納税をグループ各社が別々に行う点にある。これにより、修正申告や税務調査によって更正処分が行われても、原則としてグループ内の他法人の所得計算には影響しない。
 もっとも、新制度への移行はメリットばかりではない。例えば旧制度では親法人の資本金が1億円を超えている場合のみ電子申告が義務化されていたが、新制度ではグループの全法人に電子申告が義務付けられることになる。紙で申告してしまうと無効扱いとなり無申告加算税が課されてしまうので注意を要する。
 これまで旧制度を適用していた企業は、特段の手続きを経ることなく、原則として4月以降は新制度に移行している。

押さえておきたいIT用語

ローミング

 ローミングとは、携帯電話などの通信事業者が他の事業者から通信網を借りてサービスを提供するしくみのこと。もともとは提携先事業者の設備を利用することにより自社設備がないエリアでも通信サービスを提供できるようにするものだが、携帯電話が生活に欠かせないインフラになったことを受け、欧州連合(EU)加盟国をはじめ先進諸国では通信障害などの緊急時に通信を確保する手段としても利用されている。一方、日本国内では緊急時のローミングが普及していない。
 7月に発生した通信会社KDDIの大規模通信障害で119番や110番などの緊急通報が長時間できなくなったことを受け、ローミングの制度化を求める声が高まっている。2011年の東日本大震災後も議論されたが、当時の通信規格の方式が各社で異なっていたことがネックとなり実現されなかった。現在は音声通話の規格が共通化されているため、当時よりも導入に向けたハードルが低くなっている。金子恭之総務相は「法令上の問題などを整理する必要があるが、安全網の構築に向けて前向きに検討したい」とし、今秋にも専門家会議を立ち上げる方針だ。
 なお、海外滞在中に国内で契約している携帯電話で現地の事業者の通信網に接続し、通話やインターネットを利用できるサービスは「国際ローミング」と呼ばれている。

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