毎月更新!時事コラム

第1736号(5月15号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「税制優遇で個人の資産運用を促す」(5月5日、岸田文雄首相)――ロンドンの金融街・シティでの講演で。貯蓄から投資への移行を促す「資産所得倍増プラン」を発表し、「投資による所得倍増を実現する」と説明した。少額投資非課税制度(NISA)の拡充や預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設に取り組むという。直近の10年間の家計金融資産の推移を見てみると、貯蓄中心の日本では1.4倍にとどまっているが、資産運用の盛んな米国では3倍、英国では2.3倍に増えている。岸田首相は日本の個人金融資産約2000兆円のうち半分以上を占めている現預金について、「投資に回れば大きなポテンシャルになる」と日本市場の将来性を語った。ただ、SNS上では「投資よりも消費を促して経済回復させるべき」「資産がない人は投資ができない」などと否定的な意見も上がっている。

◆「債権者からの異議申述があり節税目的の減資を中止した」(4月28日、アジャイルメディア・ネットワーク(東証GRT)の上田怜史社長)――同社のIR資料で。5月1日に予定していた資本金1億円への減資について中止を発表し、「債権者保護の観点を総合的に考慮した結果だ」と説明した。資本金1億円以下の企業は税法上の中小法人に区分され、法人税率の軽減や欠損金の繰越控除など様々な税優遇が認められており、節税効果を目的にコロナ禍で中小法人化を進める企業が相次いでいる。ただ資本金の減少は株主や債権者にとっては会社破たん時の取り分が減少することを意味する。

◆「ふるさと納税のルール違反は私の責任」(4月26日、兵庫県洲本市の上崎勝規市長)――記者会見で。制度違反を理由にふるさと納税制度から2年間の除外が決まったことを受け、「私どもの方が間違っていた」と陳謝した。地方税法上、返礼品の金額は寄付額の3割以下に収めなければならないが、同市では10万円の寄付に対し5万円分の温泉利用券が交付されるなど基準を上回る返礼品が設けられていた。同市は金額の一部は「手数料」などと説明して合法だとしてきたが、総務省に認められず処分が決まった。返礼品の納入事業者からは収入の見込みが失われたとして損害を訴える声が挙がるが、上崎市長は「金銭補償は考えていない」という。

気になるニュースのキーワード

年金の繰下げ受給

 年金の繰下げ受給とは、年金の受け取り開始日を原則の65歳から後ろ倒しすることを指す。繰下げた月数に応じて将来的に受け取る年金の年額が増やせる。繰下げの限度は70歳までとなっていたが、4月に施行された年金制度改正法により、75歳まで延長された。繰下げできる期間が延びた分、これまで以上に年金額を増額できるようになった。
 繰下げ1月あたり0.7%が年金額に上乗せされる。例えば68歳まで繰下げると、年金額は25.2%(=0.7%×36カ月)の増額となる。従来は70歳まで繰下げた際の42%が増額の上限だったが、今回の改正により最大84%まで拡大した。
 ただ、受け取り開始が遅くなる分、本人の死亡時期によってはトータルの受給額がかえって減少するリスクがある。国の試算によると、75歳まで繰り下げた人の受給総額が65歳から受給開始した場合を超えるまでに10年程度かかるとされている。少なくとも男性の平均寿命(約81.6歳)よりも長生きしなければ損になる計算だ。
 また、繰下げにより年金額が増えると負担する社会保険料や税金の額も大きくなるため、額面ほど手取りは増えない。
 なお、年金の受け取り開始を早めることは「繰上げ受給」と呼ぶ。繰上げの限度は60歳までとなっており、繰上げる期間に応じて年金額は減少する。従来は1月当たり0.5%の減額とされていたが、今回の改正により1月当たり0.4%へと緩和された。

押さえておきたいIT用語

VR

 VR(バーチャル・リアリティー=仮想現実)とは、360度の視界により立体的に表現された仮想空間のことを指す。現在の主流になっているのはメガネ状の装置である「VRゴーグル」を通じて視覚や聴覚に訴えるVRで、コンピューターゲームや映像作品、スポーツ、音楽、広告、医療といった幅広い分野で導入が進んでいる。VRゴーグルを超える臨場感を演出するためのVRも開発が進んでおり、特殊な装置を使って風や雨を再現し皮膚感覚で体感させるものや、足元を傾けて平衡感覚に訴えるしくみなどがある。
 IT調査会社のIDC JAPANによると、世界のVR関連市場規模は2017年から年平均71.6%の成長を続けており、2022年には2087億ドルに達するという。これまで成長を牽引してきたゲーム分野にとどまらず、今後は対応機器の普及につれて企業のプレゼンやPR、設計といった実務に使われる場面が増える見込みとなっている。
 なお、VRが仮想世界そのものを作り出すのに対し、現実の世界をベースにデジタル情報を表現する技術はAR(拡張現実)と呼んで区別されている。ARの具体例としては、カメラで映した現実の風景の中に仮想のモンスターが表現されるスマホゲーム「Pokemon GO」や、顔認証機能により動画を自動加工するカメラアプリ「SNOW」などがある。

お問合せ

三重県伊勢市の「税理士法人 あおぞら」では、
起業・独立支援、税金・記帳・会計や
経営計画・資金繰りなどの
会計業務、
相続・事業継承や資産運用・老後資金などの
ご相談に応じております。