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第1809号(2024年5月25日号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「『これは社会保険料だから増税じゃない』なんていう理屈はそもそも成り立たない」(5月7日、日本維新の会の青柳仁士衆議院議員)――記者会見で。日本維新の会は、税と社会保険料の徴収と、その一元管理を担うデジタル歳入給付庁を創設する法案を提出した。法案提出の経緯について青柳議員は「今、税金の取りっぱぐれが相当ありまして、税金を集める話と社会保険料を集める話は取られる側からすると同じ話なのに、あたかも違うことであるかのように扱われている」と指摘した。続けて、一元管理できれば「子ども・子育て支援金のような『これは社会保険料だから増税じゃない』なんていう理屈はそもそも成り立たない」と説明した。

◆「社会保険料の仕組みって成り行きで決まってきたところがある」(5月1日、実業家の夏野剛氏)――ネット番組で。金融所得からの社会保険料負担案について夏野氏は「社会保険料の仕組みって成り行きで決まってきたところがある。今まで税の徴収や社会保険の徴収を企業に任せていた。だから給与所得者の場合は、全部会社がそれ(社会保険料の徴収)をやるという制度になっていて、いま金融所得についても、証券会社がそれをやるということになっている」と分析。負担案の実施について「『所得と同じでしょ』という考え方をとるのはフェアだと思う。金融所得の税率が20%で低いわけだから、社会保険料を金融所得からとっても、依然として投資の方が有利」と私見を述べた。

◆「大変な危機意識は持っている」(5月7日、岸本周平和歌山県知事)――記者会見で。総務省が発表した統計で和歌山県の空き家率が全国で1位だったことについて岸本知事は「大変な危機意識は持っているので、できる限りの施策を打っていきたい」と述べている。施策を打ち出す上で、持ち主が分かるもの、分からないものがどの程度の比率なのか分析していくという。治安の問題や倒壊の恐れなど、さまざまな観点から「早急に手を打つべき」としている。

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企業の奨学金返還支援(代理返還)制度

 日本学生支援機構 (JASSO)から奨学金(第一種奨学金・第二種奨学金)を借りた本人に代わって、勤務先が奨学金を返還する制度。奨学金返還分を給与へ追加するケースは従来からあったが、本人を介さず勤務先が直接JASSOに送金できる仕組みとして2021年4月にスタートした。23年12月末時点で1463社が同制度を利用しており、最近では千葉信用金庫や大東建託パートナーズが導入した。代理返済する金額は事業者に委ねられ、払込取扱票によって郵便局やコンビニから送金する。24年度中には口座振替でも支払いができるように準備が進められている。
 同制度では事業者・従業員ともに税制上のメリットが見込める。事業者側は、支援対象者が役員など一部のケースを除き、返還額を給与として損金算入できる。賃上げ促進税制の「給与等」の支給額にも該当する。従業員が給与から返還額を捻出するケースと比べると、所得税の負担も少なくて済む。さらに月額の給与額を基に社会保険料も決定されるため、給与支給でない分、社会保険料の負担が減る可能性もある。
 事業者にとっては税制面のメリットだけではなく、人材確保や離職防止、ブランディングの向上に効果があるとされる。事業規模や業種にかかわらず幅広く導入が進むが、特に若手の人材確保が難しい建設業などで導入が目立つ。

解説 国の基金

有害生物漁業被害防止総合対策基金

 大型クラゲによる漁具の破損や作業の遅延、漁獲物の品質低下などを防止し、漁業経営の安定化を図ることを目的として2008年に設立された。05年~06年に大型クラゲが大量出現した背景がある。所管は農林水産省、基金を保有する設置法人は特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構。初年度には8億9000万円の交付を受けた。これまでの交付総額は約44億1600万円で、過去最大執行額は09年の5億9400万円。23年度末の基金残高は5億8800万円で支出先はゼロ。19年度を除く15年度~22年度の計7年間で基金発動はないが、国庫返納は一度もされていない。
 農林水産省は「大型定置網に500個体以上入網等」の基準に達した場合には速やかに対策を講じられる体制を維持しているという。だが、外部有識者の点検で使用見込みの低い基金とされ、非常に大きな目標値設定が疑問だと指摘されている。運営側は「毎年初夏までは大量発生が予測できないこと、単年度予算措置ではなく、基金事業により引き続き機動的に対応していく必要がある」として疑問視された目標数値を修正しなかった。
 なお、基金事業の終了予定時期は24年3月となっていたが、5月現在で終了は公表されていない。同推進機構では現在、農水省が所管する基金を他に4つ運営している。

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