毎月更新!時事コラム

第1808号(2024年5月15日号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「日本で納税してから言え」(4月30日、大王製紙前会長の井川意高氏)――SNSで。実業家の西村博之(ひろゆき)氏が能登半島地震の復興について「能登地方は地震から4カ月経つのに、全壊した家屋の公費解体を申請した8528棟のうち完了したのは9棟。いまだに水道すら使えない家屋が多数。能登を見捨てていいのですかね?」と復興の遅れについて政府を批判した。これに対して井川氏が「日本で納税してから言え」とコメント。日本での納税について西村氏は「日本に源泉所得税で毎年2000万円以上を払っているのと、法人税も払っているので、一般の人より多く払っていると思いますよ」と説明している。

◆「現役世代の負担はもはや限界に近づいている」(4月23日、佐野雅宏健康保険組合連合会会長代理)―――記者会見で。主に大企業の従業員らが加入する健康保険組合の2024年度の赤字額が、過去最大の6578億円に上る見通しであることを発表。全体の9割弱に当たる1194組合が赤字で、厳しい収支状況が続いている。佐野氏は「社会保険の適用拡大で被保険者が増えた上、今年度は賃上げによる保険料収入の伸びが期待できる」としたが、医療費の高止まりや、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の財政を支えるために拠出する「支援金」がおよそ1700億円増える予定であることを挙げ、「高齢者医療費への拠出金の増加が続いていて、現役世代の負担はもはや限界に近づいている。制度の見直しが必要だ」と述べた。

◆「相続税は格差問題の解決にはならない」(4月29日、インドのモディ首相)―――タイムズ・オブ・インディアのインタビューで。今年の総選挙でモディ氏が再選を果たせば相続税が導入されるとの憶測が広まっていることに反論した。総選挙では相続税と富裕税の導入の是非が争点となっている。モディ氏率いるインド人民党と最大野党の国民会議派は、互いに相手が新税導入を画策していると非難し合っている。モディ氏は、「相続税も富裕税も解決策に見せかけた危険な問題」とした上で、「これまで成功したことは一度もなく、誰もが等しく貧しくなるように富を分配してきた」と指摘。「不和を生み出し、平等へのあらゆる道を閉ざし、憎悪を生み、国の経済・社会的構造を不安定にする」と述べた。

気になるニュースのキーワード

在職老齢年金(在老)

 厚生年金を受給しながら働く65歳以上の高齢者の厚生年金と賃金の合計が50万円を超えた場合、超過分の半分を厚生年金からカットする仕組み。2021年度末の対象者は、65歳以上で働く受給者の約17%に当たる49万人。
 現在の年金制度は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての人が加入する国民年金と、勤め人が最長で70歳まで加入する厚生年金の二階建てとなっているが、在老は厚生年金だけが対象だ。そのため、原則65歳から支給される老齢基礎年金(国民年金)が賃金の額によって停止されたり減額されたりすることはない。
 厚生年金の加入期間は70歳までだが、被保険者でなくなったとしても厚生年金の適用事業所に勤めて給料を得ている限り、在老の仕組みは引き続き適用になる。
 在老の減額対象者は〝働き損〟にならないよう就業時間を調整することも多い。そのため対象者だけでなく、人手不足に悩む事業者からも制度の見直しを求める声が上がっている。ただ、在老によって減額された年金の合計額は年4500億円に及び、制度の縮小や廃止に当たっては、その分の財源が必要になる。
 5年に一度の公的年金制度の改革に向けた検討が始まっている。在老についても何らかの動きがありそうだ。

解説 国の基金

環境対応車普及促進基金

 環境関連技術分野の国内投資を促進するとして2010年に設立。所管は経済産業省。基金設置法人は一般社団法人環境パートナーシップ会議。11年からは、東日本大震災の影響による産業の空洞化を防ぎ、国内投資の促進と雇用の維持・創出を目的とした設備投資への支援事業を開始した。
 初年度に2950億円の交付を受けた。設備投資への補助率は大企業が3分の1、中小企業が2分の1、グループ化中小企業が3分の2。補助金額は最大150億円となる。補助要件として被災地への直接投資または被災地への波及効果が見込まれることが必須だった。事業は15年度までに終了し、現在は補助事業者から提出される雇用状況報告書の受領と財産処分の対応業務を行っている。
 「経営環境をとり巻く状況の変化などにより補助金を辞退した案件、確定検査などにより交付決定額よりも減額できた案件等が発生した」ことを理由に、13年度以降は毎年不用額を国庫に返納。21年度以降の支出は管理費のみとなっている。23年の基金残高は2億1900万円。事業終了は28年3月を予定。
 同基金を残置する理由について経産省は、補助事業終了後も報告書の受領や財産処分の対応業務を行っているほか、「本事業の効果分析・検証を実施するため、データの収集等を継続して事務局にて実施しており、事業最終年度において実施する効果分析・検証業務及び報告まで、事務局に引き続き担わせることが合理的と考えている」と説明している。

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