毎月更新!時事コラム

第1718号(11月15号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「税制優遇で企業の賃上げを強力に促す」(11月1日、岸田文雄首相)――記者会見で。2022年度税制改正の方針として、所得拡大促進税制(賃上げ税制)を見直し、「優遇税制の抜本的強化や補助金の活用により、企業の賃上げを強力に促していく」と話した。賃上げ税制の推進は自民・公明両党が衆院選公約で掲げたものだ。現行制度では中小企業が支払う給与総額が前年度比1.5%以上増えれば、増加分の15%を法人税から差し引く。岸田首相は減税率の引き上げなどを通じて一層の賃上げを促すという。賃上げ税制は安倍政権が導入してから10年近く経過しているものの、平均賃金は30年近く横ばいだ。一度上げた賃金は下げにくいことから、一時的な税優遇にとどまらない抜本的支援を求める声も上がる。

◆「超富裕層に課税強化しても効果はわずかだ」(10月28日、米テスラ創業者のイーロン・マスク氏)――ツイッターで。米民主党が超富裕層を対象とした増税案を公表したことに対し、「仮に超富裕層の資産に100%課税したとしてもその効果はわずかだ」と批判した。マスク氏は、米国の国債残高約28.9兆ドル(約3280兆円)と比較すると超富裕層への課税強化は雀の涙に過ぎないとし、「残りは一般市民に頼らざるを得ないだろう。これは基本的な数学だ」と指摘した。そのうえで米国の債務対GDP比は2000年の56%から現在の126%まで急上昇していることに触れ、検討すべき問題は「支出(の改善)」だと断言した。マスク氏の資産は33兆円に上るとされ、米フォーブズ誌の個人資産番付で世界トップとなっている。

◆「五輪の報奨金1億円の多くが税金に」(10月31日、東京五輪フェンシング日本代表の見延和靖選手)――テレビ番組で。金メダル獲得の報奨金として所属企業から1億円を受け取ったものの「大部分を税金で納めないといけなかったんです」と裏話を披露した。見延選手は東京五輪フェンシング・エペ団体で主将を務め、日本史上初となる金メダルを獲得。その後、所属企業の社長からサプライズで報奨金を贈呈されていた。メダリストに対する報奨金は、JOCや各加盟競技団体から支払われるもの(金500万円、銀200万円、銅100万円)は非課税だが、それ以外の団体や契約スポンサーから受け取るものは課税対象になる。

気になるニュースのキーワード

パンドラ文書

 パンドラ文書は、政財界や芸能界、スポーツ界などのスーパーリッチ層たちが租税回避地を利用して資産を隠したり、課税を回避したりしていることを示したリーク文書だ。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が各国の法律事務所や金融サービス会社から入手した膨大な財務資料などをとりまとめ、10月に公表した。
 文書では1190万件の取引が告発され、世界各国のスーパーリッチ層が租税回避地(タックスヘイブン)に関与していることが明らかとなった。関与したとして名前が挙がっている人物には、ロシアのプーチン大統領や英国のブレア元首相といった各国の現旧首脳や政府高官ら計330人以上のほか、英国人歌手のエルトン・ジョン氏などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。
 日本では、東京五輪の推進本部事務局長を務めた平田竹男氏やソフトバンクグループの孫正義会長をはじめ、千を超える企業・個人の記載があるという。なお、日本の政治家の名前は今のところ上がっていない。
 2016年の「パナマ文書」の公開以降、タックスヘイブンの利用は非倫理的だとの批判は高まっているが、ICIJ責任者のジェラード・ライル氏は「タックスヘイブンの利用をやめさせられる人々が、その仕組みを利用して利益を得ている。彼らにはやめさせる動機がない」と指摘する。

押さえておきたいIT用語

ERP

 ERPは営業や経理、物流といった企業の各部門が保有する情報を、部門間をまたがる一つのシステムで一元管理する手法を指す。Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略語で、もともとは企業経営の基本であるヒト・モノ・カネ・情報を有効活用する生産管理手法を表した概念だったが、現在では主に基幹システムを指して使われる。
 各部門で別々の業務システムを利用している場合、顧客データや在庫残高などがそれぞれのシステム上で別個に管理され、結果として同一データの二重管理といった非効率や在庫残高の食い違いなどの問題が発生するリスクがある。
 こうした問題の発生を防ぐ目的でERPは導入される。部門間のデータや業務処理を標準化することにより、業務効率化やリスク管理、経営意思決定の迅速化につながるとされている。
 デメリットとしては、各部門に特化した専門システムと異なり自社の業務フローにきめ細かく対応させることができず、一部の部門では反対に業務効率が下がってしまうリスクがある。必要な機能を盛り込むためのカスタマイズをした結果、導入期間や費用のコストが膨らむ可能性もある。
 ERPは業務内容が多岐にわたる大企業向け商品が主流だったが、近年はERPの機能を備えたクラウド会計ソフトなどの開発が進んでおり、会計事務所や中小企業でも導入が進みつつある。

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