毎月更新!時事コラム

第1712号(9月15号)
【税理士新聞より転載】

最近の税に関するコトバ集

◆「金融所得増税は必要」(9月3日、高市早苗元総務相)――月刊誌のインタビューで。自民党総裁選出馬を見据えて自身が提唱する経済政策を発表し、「金融所得課税は増税させていただきたい」と述べた。株やFXなどを活用して得る金融所得は税率が一律2割程度となっており、他の所得と分けて税額を計算する分離課税が適用されることから累進課税にならない。資産が多ければ多いほど他の収入と比較して税負担が低く抑えられることから、富裕層向けの優遇税制と批判して総合課税化を求める声はこれまでも上がっていた。高市氏はマイナンバーを活用して個人の金融所得を割り出し、一定以上の所得がある場合には税率を引き上げる案を提示した。

◆「公約違反だが増税する」(9月7日、英国のジョンソン首相)――記者会見で。コロナ禍に対応するための医療制度の整備や高齢者介護に必要な財源確保のため、「来年4月から国民保険料を1.25%引き上げる」と表明した。英国の国民保険料は日本の社会保険料にあたる税金だ。今回の増税により、3年間で約5.4兆円の財源を確保できるという。イギリスはコロナ禍のなか医療提供体制がひっ迫し、コロナ患者以外が治療や手術を受けるまでの待機時間が長期化して問題となっている。19年の選挙時には国民保険料を引き上げないと公約していたことから国民の間からは批判の声が上がっているが、ジョンソン首相は「パンデミックは誰にも予想できなかった」と理解を求めた。

◆「組員の更生に税金使うのは県民のため」(9月10日、吉田尚正福岡県警元本部長)――毎日新聞の取材で。特定危険指定暴力団「工藤会」をめぐる脱税事件を指揮したことを振り返り、「元組員の再就職支援に税金を使うのは県民のためになる」と主張した。吉田氏は2015年に工藤会対策の本部長に着任し、団体トップの野村悟被告が上納金から得た個人所得を脱税していた事案では、国税当局との異例の連携を果たし再逮捕につなげた。捜査活動に従事するなかで「暴力団の力の源泉は人員だ」と考えて組員の離脱促進にも注力し、離脱者を雇用した企業に1人あたり最大72万円を支給する給付金制度の創設にも取り組んだという。県警の支援で離脱した工藤会組員は2017年に51人と過去最多となった。

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電子帳簿保存法

 電子帳簿保存法は、電子データで国税関係の帳簿書類を保存することを認めた法律だ。税法上では原則として紙での保存が義務付けられているが、電子帳簿保存法ではPCで作成した電子データ(電磁的記録)による保管や、紙の資料をスキャナで読み取ってデータ化して保存する方法を認めている。2022年1月1日からは改正法が施行される。
 改正法では紙媒体の利用条件が制限されることになった。これまでは、メールなどを通じて受け取ったPDFファイルなどの電子書類であれば、印刷して紙媒体で保管することが容認されてきた。しかし改正法により、原則として受け取ったデータはそのまま電子データとして保存しなければならなくなる。
 さらに、不正行為に対するペナルティが強化された。現行法では保存義務違反や虚偽の記帳が発覚すると、会社法上の罰則として100万円以下の過料が科される可能性がある。また、税務調査で帳簿書類の不整備が悪質だと判断されれば、青色申告の取り消しや推計課税が課されることもあり得る。改正法ではこれら既存の罰則に加え、税務調査で電子データや電子取引のデータを改ざん・隠蔽したと判断されると、申告漏れなどに課される通常の重加算税に10%を上乗せした額が課されることになる。

オリンピック小ばなし

【最終回】五輪・パラついに閉幕

 新型コロナウイルスの蔓延により1年間の延期となっていた東京オリンピック・パラリンピックの全日程が9月5日に終了した。 日本選手団のメダル獲得数は五輪で金27、銀14、銅17の計58個となり、総メダル数および金メダル数ともに過去最多を更新した。パラでも金13、銀15、銅23の計51個を獲得し、総数では2004年アテネ大会の52個に次ぐ史上2番目の記録となった。東京大会は連日のメダル獲得で大いに盛り上がった。
 コロナ禍での開催に当初は批判の声も上がったが、大会を終えて肯定的な意見が目立つようになってきている。英ロイターの企業調査によると5月時点では延期や中止を求める意見が69%を占めていたものの、五輪終了後には一転して「開催する価値があった」との回答が67%となった。「日本を元気にした」(化学工業)、「この状況下で開催できたという国家の運営能力は国際的にも評価されるべき」(食品業)との意見が寄せられている。
 ただ、無観客開催によるチケット売上やインバウンドの消失、1年間の延期などにより赤字が膨れ上がったのは事実だ。
 大会予算は当初計画の4倍にあたる3兆876億円に及ぶ可能性があるという。巨額の費用が税金で賄われることになる以上、東京オリンピック・パラリンピックの開催にまつわる予算管理が適正だったのかどうか、今後の検証が求められる。

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